YAMAHA FG-251 近年増殖中のメタボリックシンドローム治療(温冷反復治療法)

Posted by 関 浩一 on 2016年2月20日

最近は、エレキギターよりもアコースティックギターの修理依頼が増えている。。。

神奈川県在住のT氏の依頼である。

送られてきたFG-251 (1975年11月発売、当時定価25,000円 税抜)、ちょうど40年経たものを試奏して見ると倍音と音の輪郭がしっかりしてながらも音域も広い上に、そして爆鳴りする・・・これはギター製作では、ある意味相反する事柄であるが・・・わかる人は解る???と思いますが、やはり素晴らしい!

1960年代から1980年代は特に価格の割には飛び抜けて優秀なギター(特にヤマハ&日本楽器)が多いのには驚かされる。。。

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ゆったりとしたアルペジオ演奏にも、激しいストローク演奏もどちらもいける万能ギターだ。T氏のおっしゃる通り近年の新しいギターには出せない音でしょう。。。

早速、作業に掛かる前に診断

T氏は12フレット6弦で3.1mm程度で、もう少し弦高を下げて欲しいとの依頼だが、何と逆反り???これじゃあ思うように弾けないわなあ?!ギターの体を失っている状態。(右の画像)トラスロッドを緩め、強制的に真っ直ぐにして12フレットを測定すると、4.0mm以上有りました。ネックを理想のやや順ぞりに調整出来た場合は、恐らく5.0mm近くあるものと推測されますね。。。

そして、悲惨な状態ではないが少しネックに捻じれもある。究極はトップは5mm位の浮き、ネックは右下の画像を見て貰うと解りますが、逆反りだけならまだしも波うちまでセット!!!もう最悪の極致。。。

おおお!これは?(◎_◎;)楽器屋さんやどこの工房にも断られる訳だわ。。。しかし、受けた以上やらなければ!(~_~;)

でも当初は悩みました。出来ません!と言って、送料掛けてまた送り返すのも申し訳無いなあと・・・私を頼って送料掛けてわざわざ神奈川県から・・・この時は、正直受けなければ良かったと、思いました。いやホント!

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そして、サドルにタスクが使って有るが、1弦側はご覧のように限界・・・1弦2弦は完全にビビリとにじみ音・・・これじゃあサスティーンなんて有ったもんじゃない。。。

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フレットの腐食が進んでますね。。。でも大丈夫!これ位ならピッカピッカに蘇ります。。。

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診断は終わり問題のボディートップ浮きが5.0mmあって、残念ながら画像では載せられませんが、数日間掛けて温冷反復治療法(メタボ治療)を行ってほぼフラットになりました。。。今回は特にトップ板が歪むことなく出来て、やったあ~!って感じです。心配であった逆反りネック修理(こんな事やる人は国内にはいらっしゃらないのでは?)ものかなり改善して微妙に順反りになる様になりました!大成功!過去最高の出来かも。。。

正直、T氏には作業前に何度もメールのやり取りをして、もしかして壊してしまうかも知れません!

その時は、同じものは無いですしいくら弁償しましょうか?と尋ねましたら、

たとえ使い物にならなくなっても弁償金は要りませんから!と信頼するからやってくれ!とまで言われて、断ったんじゃあ男がすたる。。。

てなわけで、今回は何とか成功しましたが!100%では有りませんから。。。

 

 

早速マスキングをして作業に取り掛かります。。

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トラスロッドを真っ直ぐに調整してから、フレット頭部を均等にそろやります。

分かりますか?4枚ある右上の画像?真ん中のフレットを良く見ると、2弦辺りと6弦付近が削れているが、真ん中の3・4弦辺りが全くヤスリが当たっていないのが分かりますか?どんなに高価なギターでも新品のギターでも大かれ少なかれこうなっています。

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フレット頭部をムラ無く削ったら今度は、フレットエンドドレッシングファイルでフレットに丸みを付けて、ううう疲れる。鏡面仕上げのコンパウンドの作業も大変だが、何と言ってもこれが一番しんどい!フレット1本1本ゴシゴシ20~24本。。。3本もやると嫌になりますよwww、そして、#400、#800、#1200と紙やすりでフレットのケバを綺麗に取ってやります。

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最後は、フレット用コンパウンドで鏡面仕上げ。指が痛い、、、ううう一休み(~_~;)

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どう?あの腐食したフレットが、、、おおお~!ピッカピカ!後は金属保護剤を。。。

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画像はありませんが、ナット溝高さを調整するのと同時にヘッド(ペグ側)の切り込みを多くしてやり、Rを付けてフレット側の1~2mmの部分だけ弦が乗っかる様にしてやった後、更によりサスティーンを良くするのに、トップの無駄な所を削ってやります。左下の画像のように。1弦、2弦、3弦が特に溝が深すぎて弦が埋もれてると弦の振動を殺してしまいますから、ナット上の弦を触れる位にするのと振動を殺しませんね。。。

これもそうなんですが、弦溝も削りすぎるとビビりを起こして、苦労が水の泡に。。。

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最後に長年こびり付いた手垢やホコリ汚れをしっかり取って、指板保護剤とフレット保護剤を塗布して、一晩寝かせます。

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は、サドルは人気のタスクが入っていて相性が良かったので、牛骨は止めにしてスペーサーを入れ対処する事にしました。

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結果、トップ浮きはブリッジを一切削る事無く修正はとてもうまく行き、ネック多少逆反りだったネックは今は真っ直ぐより微妙に順ぞりに出来て、まだ薄い0.3mmのスペーサーが入れられる余裕があり、弦はT氏お好みのマーチンM140ライトゲージ012

~054を装着。

弦高は12フレット6弦1弦で、2.9mm/2.1mm取り外したり、エクストラライトゲージやスーパーライトゲージを使えばもう少し弦高は下がるので、これで充分!!!

あとは、トラスロッド等で微調整してやれば思うようなギターに!!!

40年ぶりに息を吹き返したFG-251もきっと喜んでくれているはず。大切にしてやって頂きたいものです!

 

今回は、依頼者T氏と何度もメールのやり取りをしながら、リペア&カスタマイズを進めて参りまして、本当に良かったと思っています。

今まで、このブログやウェブショップで中古ギターの販売やリペアをして差し上げて、その後に感謝のメールやお電話をたくさん頂きましたが、言うまでも無く後日T氏からも感謝のメールが来ました。

やはりこんなメールを頂くと、それまでの苦労が吹っ飛んでしまいます。

ギターリペア&販売を通じて、一生こんな気持ちでいられるようにしていきたいと思っております。。。技術をドンドン磨き上げたいと思っております。

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