埼玉県在住 Sさま YAMAHA FG-140 赤ラベル メタボ治療

Posted by 関 浩一 on 2016年3月29日

埼玉県のSさんより送られて来た、ビビりがひどくて弾き難いと言われるヤマハのアコギ。。。

ギターが到着して早速試奏してみたが、ビビりが確かに酷いが、赤ラベルらしい軽やかな大変良い音色である。

中古で本体のみで4万円位で購入されたそうであるが、、、え~?失礼ながらジャンクの状態?!いくら赤ラベルだとしても。。。どこで購入されたかは判らないが、こんなもの(ネックもトップヒドイ・・・失礼!でもほんと!)を楽器屋さんが4万円位で売るなんて、考えられないしメンテもしてくれるだろうし。。。失礼ながら無知なリサイクルショップでも4万円位では売らないでしょうね。。。クレーム来るにきまってますから。。。ヤフオクでは?と思ったんですが、後々聞いてみたらリサイクルショップだそうです。ヤフオクだったら、ノークレームノーリターンで、泣き寝入りパターンが多いんですが、リサイクルショップだったら、返品すれば良いのに!と言ったんですが、やはり余りにも良い音色のギターで、放せないとの事。。。

 

私も、FG-140だけでも4本くらい持っているが、赤ラベルの110や150や180も良いんですが、この140だけは、サイド・バックにラワン材が使ってあって、特に中高音が煌びやかで他のギターでは絶対出すことの出来ない音色なんですね。。。解ります。。。

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まあしかし、ボディー全体的に大変綺麗な物であるから仕方ないかも。。。

僕は、FGの110、140、150、180全て数本づつ所有しているが、確かにこれは鳴りの良い方ではあるが、しかしメタボがかなり酷い。。。

 

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測定してみると、最低7.0mm~8.0mmはある。。。

ブリッジのサドルの高さもも限界で、テンションが弱くて1弦が完全にビビりを起こしている。。。

 

そして、何と!元反りと弦高が高いのでトラスロッドを力の限り締め付けたのか・・・???

極め付けが、トラスロッドのテンションが全く掛かっていないのに・・・それでも、まだ逆反りになっている。。。トラスロッドのナット完全に緩めてロッドをプラプラ状態にしてもこの状態だ。。。ううう(~_~;)

一度18フレットから少しづづ反ってきて、10フレットから5フレットにまで逆反りになっていて、いわゆるネックの波打ちである。1弦側のそうだが、6弦側が酷いのが右の画像ですが、わかりますよね。。。これは大変!!

 

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Sさんには申し訳ないけど、あの世行きのギターですね。。。(◎_◎;)7こんなひどいのは初めてかも。。。

弦高を下げる為に、トラスロッドで調整して無理やり真っすぐに調整なさっている方々は大勢いらっしゃいますが、そうでは無くてトラスロッドを緩めても逆反りのまま。。。

これは、メタボに加えてネックの元反りで、そのネックを無理に順反りを起こそうとしたのか?またはプロがヒーターを使って順反りを直そうとした結果、いわゆる波うち逆反りになってしまい、修理不可能なので処分したのでは?・・・それを購入されたんだと思います。。。悲惨ですね。。。

 

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だから、楽器屋さんもリペアショップをお断りになる訳だ。。。

ボディは傷も打痕も至って少なくコレクターズコレクション並みに綺麗だがだが・・・使い物にならないんでは、飾って置くしかない。。。

まあ、一度お断りしようと連絡はしたものの、Sさんは二つと無い良い音が出るギターなので無理を承知で何とかして欲しい!多少修理代がお高くなっても直してほしいとの事なので、概算見積りの提示をして挑戦することにしたが。。。

 

早速、メタボと治療とネックが元反り修正に取り掛かりました。

下の画像は、完全にお見せすることは出来ません。。。ごく一部の問題の無い画像しかお見せできませんが。。。(‘◇’)ゞ

 

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何とかメタボもトップ浮きが8.0mm程度あったモノが0.0mmにかなり近づきました!

私が考案した特殊な方法で、簡単に言うと70℃~80℃のそばに付いて温度管理をしながら、数十分から1時間温めて、後は冷やして一晩を、数日繰り返し行なう。。。

温度を上げすぎると塗装がダメになったり下げ過ぎても効果は無い。。。

半紀の五十年も掛けて、少しづつ曲がった木を一日や二日で直そうなんて思うと、ギターにバカにするな!と拗ねられてしまって、無理をすると壊れてしまい、思うようには行きません。

当然トップ板にの数十キロ荷重を掛ける訳だが、これがまた何キロにするか難しい。単板と合板かも違いますし、10年20年と40年50年ものともそれぞれ違いますし、スキャロップド・Xブレーシングとノンスキャロップドとも、違いがあります。そしてそれによって加重をどこに掛けるかも、また1部に掛けるのか、全般的に掛けるのかも、ギターの構造によって大きく変わります。。。温度も違います。加重をかけ過ぎても一気にやろうとすると、力木が折れたり剥がれ落ちたり、過去何度も失敗し、ギターを使い物にならないようにそてしました。(-_-;)

毎回この作業は本当に緊張する。加重を掛け過ぎたり、温め無いで加重を掛けると力木をパキッ!!!と折ってしまう。。。終了です!(;´Д`)

そして、2週間位かけて何とかネックも真直ぐに近い状態になりました。。。やった~!

そしてネックですが、これがまたもう一つ難しい!このネックが、ネック!!!ハイ!笑うところです。(^^;)

てなわけで、何とか問題は解消出来ました!!!

 

今度は、トップ坂打痕の治療。。。まずは細かいペーパーで凹みの中の塗装に傷つけて粗目コンパウンドで塗装被膜に傷を付ける。。。

これをしっかりやらないと、筆さし塗料と馴染まなくて簡単に塗装が剥がれたりします。

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そして、油脂分解剤で汚れや油脂分を取ってから、ウレタン塗料に硬化剤を入れてタッチペイント。。。のんびりしてると、硬くなってしまいます!(・_・;)汗

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そして数日間置いて、から今度は#1500のペーパーで塗料の盛り上がりを均等に、この後も徐々に塗装が乾いて痩せていくんですよ~!自動車の塗料も一緒なんですが、いくら硬化剤を入れても1ケ月もしないと本当は完全に乾きません。ですから強制乾燥してから数日後になって最後にもう一度やりますが、この程度ペーパーで削って置いた方が、渇きは早くなるので。。。

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数日乾かして本格的に均等に削ってやります。#800~#1500とその場所や状態によって使い分けします。

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いよいよ、表面が粗々均等になって来たところで、少し中性洗剤を入れた水で水研ぎ。

そして今度は中目コンパウンドで研磨磨き。。。ここでまだ平らになっていないところは#1500のペーパーでまた水研ぎ。。。ふう~!大変です。。。(・_・;)

 

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きっちり平らになったところで、細目のコンパウンドで光沢を持たせ、最後には極細目のコンパウンドで細かい傷を取り、仕上げます。

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どうですか?ピッカピカ~!打痕が全く無くなり、新品より綺麗になりましたね~!あっ?言い過ぎ?あはは。。。

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綺麗になった所で、今度は指板の調整に入ります。フレットや指板のメンテはしてやらないとダメですね。。。そしてぺグのメンテナンス。クールソンタイプは、皆さん知らないと思いますが、給油は必要ですよ!ギブソンのヒスコレなんかに付いているカバードタイプも給油が必要ですよ~!カバー背中の上部に穴が開いてますよね?あれが給油口です。。。これを1年に一度差してやるだけで、恐らく半永久的に摩耗はしません!壊さない限り。。。そして指板を傷つけないようにしてからマスキングをして、フレット磨り合わせ作業に入ります。

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ご覧の様に、削れているところといないところがありますよね~。これが問題なんです!これでは、限界的に弦高を下げる事は出来ませんね~。。。フレットの高さが均等でないと。

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そして、フレット用のやすりで一本づつR研磨。そしてサンドペーパーでヤスリ傷を取ってやります。。。

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そして、仕上げは金属用コンパウンドで、ゴシゴシ・・・指が攣ります!毎回・・・これを真面目にやらないと、スライド演奏やチョーキングがスムースにいきません!はあっ

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どうですか?ピカピカでしょう?顔が映る位に鏡のように仕上げなければいけません。

 

 

アルコール系の洗浄剤で長年溜まったホコリや指板の手垢や油脂分を取り、そして十分乾かしてから、指板メンテ&フレットメンテ。

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これは例の、私のお気に入り、ビーズ・カルバナワックス配合のオレンジオイル、指板の割れを防いで保湿保護だけでは無くて、フレット腐食をも抑えてくれるありがた~い、ワックス。これを考えた人は偉い!と毎回施工しながら思います。

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ご覧のように、12フレット6弦/1弦でかなり弦高を下げることが出来ました。

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大変お疲れさまでした!

やはり、今回は特に希少な赤ラベルで数も少ない、もし有っても真面に使えるFG140を探すのが大変で、壊すと大変なのでとても緊張しました。。。(^^;)

トップ浮きは、何とか成功させるノウハウを蓄積してはいますが、元反り改善修正は100%でないにしてもそこそこの確立で上手くいくんですが、今回はネックの元反り&逆反り、いわゆる波打ちは相当改善して音詰まりやビビりは無くしたものの、その分フレット高にどうしてもしわ寄せがいってしまいます。。。完璧に真っすぐに直すのは、かなり難しい課題ですね。。。

 

これからも、どんな難題にも改良改善を重ねて、捨てられてしまう運命のギターたちを、可能な限り蘇えられさせれるように挑戦を続けたいと思います。

Sさんありがとうございました!

また何かあれば、何なりとご相談ください!

その後、ご連絡しましたらFG-140は元気でいい音色出しながら、充分可愛がって貰っているそうです。良かった良かった。。。

 

 

 

 

 

 

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