アコースティックギターのメンテ&リペア ~モーリスW18の巻~
1970年代に製造販売されていた、モーリスW18が手に入った!すこぶる保存状態が良い。
フレットの減りも無く、傷やへこみ、木の割れや日焼け、塗装の白濁劣化、ペグの錆も少なく40年間ずーと、殆ど使用しないで湿度や温度管理された場所に、ケースに入れ保管してあったとしか思えない、その位コンディションが良い!!!勿論、ギターの最重要部のネックの捻じれ、反りも全く無い!
難が有るとすれば、少しだけメタボ気味の所だけかな?しかし、40年も経ったものとしては、重症の状態のメタボのギターが多い中、ありえない位の軽微なメタボである。恐らく弦を緩めて保管してあったに違いない。
トラスロッドを調整し、フレットの減りも無くビビりチェックもしたが、ノープロブレムなので、フレットシェーパー作業は、やらなくても良いと判断。
まずは、弦高測定・ネックの反り・フレットの摩耗・ペグの回り具合・ナットの状態・ブリッジ状態・ボディートップ板の膨らみ具合、等の状態を目視及び測定し、メンテナンスに入る。
まずは弦を取り外して、ボディー全体や特に指板の汚れをガラスクリーナーを吹きかけ、ブラシ等を使い手垢・ホコリなどの汚れを綺麗に拭き取ってやる。
※注意LPG缶を使う。LPGはアルコール成分で水分が少ない為乾きやすい利点がある。
続いて、指板が乾いたところで、”フィーデン・ワックス”を塗布してよーく刷り込んでやる。
※フィーディン・ワックスは、ビーズワックス、カルナバワックス、オレンジオイルの天然素材を配合して、木を乾燥を防ぎ割れから守るだけでは無く、チョ―キング時のフレットの滑りを良くする事の他、弦の劣化及び錆からも守ってくれるし、フレットの汚れや錆、腐食からも守ってくれる優れものです。
次は、ボディー全体にポリッシュ・ワックス仕上げ。価格も安価で、”ギター職人”のポリッシュがおススメです。
あと、古いビンテージもの特にラッカー塗装の場合はわずか含まれるコンパウンドで塗装面を痛めてしまう危険性があるので、専用のポリッシュを使う。
その次に、ナットのチェックをしたが、弦の埋もれているギターは多く有るが、これは加工不要!丁度いい感じで、弦の頭が見える位のナット溝だ。
まずは、ナットの溝点検清掃、給油。これをしないとチューニング時に「ピキン!」とと言う音が出たり、弦が切れたりしやすいので、弦を長持ちさせたり、チューニングがスムーズになり、また演奏してからの「チューニングが狂いにくい」ので、絶対欠かせません!!
ペグのメンテナンス。チューニングをスムーズにさせ、長持ちさせるにはこれを1度だけでもやってらるといい。綺麗に拭き取って、腐食防止にサーフェイス・プロテクターでコーティング。
いよいよ弦張り。その前に、ここでまた重要なのは、サーフェイス・プロテクターでコーティングしてやる事!
チョーキングや、フィンガリングやピッキングがスムーズに出来るだけではなく、”フッ素”が配合されていて手垢や塩分、水分からも守り、錆や劣化から守り、弦を超長持ちさせます。
弦張りで、チュウニングが狂ったり、抜け外れたり、特に微妙なチューニングにも対応した巻き方が、このやり方です。
まず、画像の様に隣のペグに支柱に掛かるぐらいに、弦の巻の余裕をとる。そして、支柱の穴に通した弦の先端側の上を1巻通す。
※あっ忘れてた。弦張りの前にもう一つ重要な事が!ペグの支柱のナットの増し締めです!色々ギターリペアをしてきたが、殆どのギターはここが緩んでいます。緩んでるとチューニングに大きな影響がありますし、ペグが壊れやすい。
そして、2回巻目は弦の先端がわの直下を通し、画像の様に弦を1度クロスさせる。
これが、完成した画像です。3巻が一番良い。せいぜい4回巻。何故かと言うとペグの支柱のくびれた直径部分で調弦出来なくなってしまうからである。支柱の元部で調弦すると、直径の大きな所で行う事になりペグを少し回しただけで、チューニングが狂いやすい。
上から下へ巻くのも×、下から上へ巻くのも×、1回巻も2重巻も×、上から下へクロス3回巻が一番微妙なチューニングが可能になり、調弦が狂いにくい方法です。
プロ並みのギタリストの方で、案外知らない人が多いのには驚かされる。。。(-_-;)
12フレット6弦で3.3㎜、1弦2.3㎜で、軽度なメタボ対策と少し弾き易くしてやる為に弦1度、弦を緩めてブリッジを0.7㎜程度研磨。
12フレット6弦で2.8㎜、1弦1.9㎜になり、完成!!!!!
40年の歳月をへて、ここにモーリスW18が蘇りました!お疲れさまでした。(^▽^;)
オール合板のW18だが、ヤマハの赤ラベルも良いけど、このモーリスW18も木が良い具合に乾ききっていて、良い鳴りの1本に仕上がりました。。。
可愛がってくれる、ご主人様が見つかるといいね。。。。